より良い医療・介護サービスを支えるDX

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AI(人工知能)などのデジタル技術を活用して業務を改善し、より安全で質の高い医療・介護サービスにつなげていく取り組みです。

石鎚会グループでは、職員が患者さんや利用者さんと向き合う時間をより充実させるため、2025年8月に「IT・DX推進チーム」を発足させました。病院や介護施設などの垣根を越えてAIやITに関心を持つ職員が集まり、現場で感じている課題を持ち寄りながら、さまざまなツールや技術を比較・検証し、業務改善につながる取り組みを進めてきました。

その結果、実際の業務へ導入された仕組みも生まれ、業務の効率化や情報共有の充実など、少しずつ成果が広がっています。今回は、その取り組みについてご紹介します。

 

AIが文書作成を支援 正確性を保ちながら業務を効率化

病院では、患者さんが退院や転院された後も切れ目なく医療や介護を受けられるよう、退院サマリーや診療情報提供書、看護サマリーなど、さまざまな文書を作成しています。これらは次の医療機関や介護施設へ患者さんの状態を正確に引き継ぐための大切な記録です

しかし、文書の作成には電子カルテの診療経過や検査結果、お薬の処方内容、看護記録など多くの情報を確認しながら内容を整理する必要があり、作成には少なくない時間を要していました。

そこで導入されたのが、電子カルテの情報をAIが整理・要約し、文書作成を支援する仕組みです。AIが作成した内容は、病棟クラークや看護師が必ず確認・修正したうえで完成させるため、正確性を保ちながら作業時間を短縮できるようになりました。

例えば病棟クラークでは、退院サマリーの作成時間が約15分から約4分、診療情報提供書は約17分から約7分へとそれぞれ短縮されました。看護部でも同様に看護サマリー作成支援を導入し、記録業務の効率化を進めています。

 

情報共有をスムーズに 現場で必要な情報をすぐに活用

医療や介護の現場では、患者さんや利用者さんの状態を正確に記録し、多職種で共有することが欠かせません。石鎚会グループでは電子カルテを中心に、音声入力システムや測定機器とのデータ連携などを導入し、記録業務の効率化を進めています。

通所リハビリテーションでは音声入力システムを活用し、記録作成時間を短縮。今年度はBluetooth対応の血圧計・体温計を導入し、測定結果を電子カルテへ自動で取り込む予定です。これにより転記作業の削減や入力ミスの防止が期待されています。

訪問看護では携帯型超音波画像診断装置(ポケットエコー)を活用し、訪問先でも必要な情報をその場で確認できる環境を整えました

また病院でも、病室で電子カルテの閲覧や入力ができるスマートタブレットの導入を予定しています。スタッフステーションとの往復を減らし、患者さんのそばで迅速に情報を確認・記録できる環境づくりを進めています。

 

テクノロジーで見守りを支える 安全と安心につながるDX

介護老人保健施設やすらぎ苑では、見守り支援機器を導入し、利用者さんの状態変化や離床の様子などを把握できる体制を整えました。転倒などのリスクを早期に察知することで、安全性の向上につながっています。

また、自動洗浄浴槽の導入により、利用者さんの身体的負担に配慮した安全で快適な入浴を実現するとともに、介助する職員の負担軽減にもつなげています。

さらに今年度はインカム(ヘッドホンとマイクが一体となった通信機器)の導入も予定しており、職員同士がリアルタイムで情報共有できる環境づくりを進めています。迅速な対応や、移動・伝達にかかる時間の削減など、介護現場のさらなる業務改善が期待されています。

 

AIは「人」に代わるものではありません

報告書、会議資料の作成、訪問看護や介護における訪問ルートの作成などにも生成AIを活用し、さまざまな業務の効率化を進めています。文章作成や情報整理を支援することで、業務負担の軽減や情報共有の充実につながっています。

一方で、最終的な確認や判断、そして患者さん・利用者さんへの対応は、必ず職員がおこなっています。AIはあくまで業務を支援するツールであり、人にしかできない仕事を置き換えるものではありません。また、個人情報の取り扱いにも十分配慮しながら、安全かつ適切な運用を徹底しています。

デジタル技術によって生まれた時間は、患者さんや利用者さんへの対応、多職種との連携、ご家族とのコミュニケーションなど、人だからこそできる業務へと生かされています。

 

DXは導入して終わりではありません

DXの本質は、新しい機器やシステムを導入することではなく、それによって生まれた時間を「人にしかできない業務」へ充て、サービス全体の質を高めていくことにあります。そのためには、新しい技術を導入するだけでなく、現場で使いこなし、日々の業務に定着させていくことが欠かせません。

現在も、新たなデジタル技術の導入や活用に向けた準備を進めています。その一環として、今年度導入を予定しているモバイル型電子カルテについて説明会を京都田辺中央病院で開催し、実機を用いたデモを通して職員が活用方法への理解を深めました。

石鎚会グループでは、この1年間、IT・DX推進チームを中心として現場の声を取り入れながら、さまざまな業務改善を重ねてきました。

今後は、こうした業務改善をさらに継続・発展させるため「推進担当者」を配置し、各部署から寄せられる改善提案や要望を集約する体制へ移行します。改善内容の優先順位や重複を整理しながら、より効果的・継続的な業務改善を進めてまいります。

医療や介護を取り巻く環境が変化し続けるなか、石鎚会グループはこれからも現場の声を大切にしながらデジタル技術を柔軟に活用し、より安全で質の高いサービスを提供できるよう取り組んでまいります。

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